Mind Science

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フロイトが後期になって唱えた、精神分析で“前意識”という概念があります。これは、「現に意識化されてはいないが、意識化が可能な心の領域」の意味です。心理学では“下意識”と表現されます。
このように、私たちの心の世界を意識化しようとすることは非常に難しいことでもあり不可能なことも多くあると理解してください。全ては脳の無意識的な操作のもとでなされているのです。意識を「氷山の一角」と例えられるように、意識により自覚されるのはごく一部であり、残りは無意識的・無自覚的なままに情報処理がなされ、私たちの生きていく上で必要なすべてにおいての精神機能を支えています。

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私たちが、意識と呼んでいるものは、脳の働きで考えると前頭前野の理性的に情報を処理していく脳の部位だといえます。
また無意識とは、意識化されにくい、もしくはされることがない脳の働きで、情動系と呼ばれる大脳辺縁系の部位の働きとされています。

私たちの行動は無意識的に働く脳のシステムによって生じています。ゆえに、行動のほとんどが意識化されずに行っているのです。歩くこと一つにしても、脚や身体全体の動きや反射に意識を向けてもいませんし、無意識に処理されています。計算においても、私たちは計算結果を意識にのぼらせることはできても、計算処理過程自体は意識できないのです。同じように、何かを考えてある結論を出すに至る、脳内の操作については説明することができないのです。
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私たちの脳は非常に短い時間で、言葉や図がスクリーンに表示された場合、その言葉や図についての情報を知覚していても、自覚(アウェアネス)がありません。このように無自覚的な(意識できない)刺激、意識にのぼらない数ミリ秒(1000ミリ秒=1秒)の刺激でもさまざまな感情=情動は形成されるのです。
私たちが刺激を意識できるためには、その刺激が脳内で約500ミリ秒(2分の1秒)持続される必要があるのです。意識について理解するために、意識=気づき(アウェアネス awareness)についてもう少し考えてみましょう。

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私たちは、評価・判断・推論を含むような高次の心的過程が自分の中で生じていること自体を、直接的に意識する(気づく)ことができないのです。また、自覚化(アウェアネス)される心的経験に先立って、それを決定づける無自覚的な過程が存在しているのです。アウェアネス(気づき)を生み出すために必要な、神経細胞活動のタイム-オン(持続時間)の長さは、約500ミリ秒が必要だということが分かっています。
思考に限らず、自分の中に起こっている何らかの心理的要求を気づくことはよくあると思います。私たちが何らかの行動をするとき、動作を起こそうとする意図の自覚がまったくないまま、脳の中で無意識に自発的な行為を起こすことが出来るのです。私たちのほとんどの行動は、脳が無意識に自発的なプロセスを起動しているということが分かってきています。さらにいえば、人には自由意志などあるのだろうかと思えるほど“意識的意志”を抱く以前に“無意識的意志”によって脳の無意識の領域で自発的なプロセスが勝手に起動していることが分かってきました。
私たちの自覚している“意志”とは、無意識の意図を押し付けられているだけで、自由意志とは果たしてあるのだろうかといえるほどなのです。そうはいっても、先行する無意識の活動を受け入れがたいと判断し制御することができる、意識的な拒否プロセスも確かに働いていると思います。本来、人の意志は意識的に遂行されることを前提としているために、その選択や行為に社会的責任が生じてきます。
生きるということは、自分の意志なくしては考えられないと思います。常に人は様々な願望や衝動にかられて生きているともいえます。それが無意識のプロセスから起因するものであったとしても、そういった心の働きを意志によって拒否しなければいけない時もあります。したがって、私たち人間には意識を伴った意志の制御機能がしっかりと備わっているといえます。もし仮に、いろんな精神的作用が無意識の領域から起動され私たちに働きかけていたとしても、その無意識の意図に気づいた後にそれを拒否する十分な時間はあると思います。だからこそ、トラウマに支配された不適切な情動に支配されないために、自らのトラウマと無意識の実態を正しく把握して、適切な状態に修正を加えておく必要があるのです。
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無意識が作り出している心の病は、無意識が変わることでほとんどが治っていきます。(理性の調整が必要な場合があります)。無意識が変わるためには、無意識の世界で作り出す“情動”が修正されるということになるのです。

心の健康はある意味で、情動の衛生管理によって保たれるといえます。心の問題は、情動の秩序が壊されたことの表れであるといえます。情動の不適切な働きかけは、かなりの程度までは心の問題の範疇で済みますが、あまりに長期化すると、精神病理的な結果を招くことにもなります。無意識に関する脳科学的裏付けや情動がいかに心の病に絡んでいるかを理解して少しでも早く対処して頂きたいのです。